不当解雇・退職勧奨の対応と解決の流れを弁護士が解説

相談者
相談者

先生、聞いてください…。昨日、上司に呼ばれて「君にはもう任せられる仕事がない。明日から来なくていい」と言われたんです。これって、もう従うしかないんでしょうか?

弁護士
弁護士

それはお辛かったですね。でも、結論から言うと、慌てて従う必要はまったくありません。日本の法律では、会社が従業員を解雇するには厳しい条件があるんです。

相談者
相談者

えっ、そうなんですか? 「会社が決めたことだから仕方ない」と思っていました…。実は「退職届を出してくれ」とも言われていて。

弁護士
弁護士

その退職届、今はまだ出さないでください。それを出すかどうかで、あなたの立場は大きく変わります。この記事では、解雇や退職勧奨に直面したときに「何をすべきか」「何をしてはいけないか」を、順を追ってわかりやすく説明していきますね。

突然の解雇や、「辞めてほしい」という会社からの働きかけ(退職勧奨)は、ある日突然やってきます。頭が真っ白になり、「自分に落ち度があったのかもしれない」と、つい会社の言い分を受け入れてしまう方も少なくありません。

しかし、日本の法律は労働者を保護しています。会社の言うとおりにする前に知っておくべきことを、埼玉(川口・浦和・大宮)で労働問題に取り組む弁護士が、できる限りわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 「解雇」と「退職勧奨」の違いと見分け方
  • 告げられた直後にやるべきこと/やってはいけないこと
  • 交渉・労働審判・訴訟の流れと期間の目安
  • 解決金の考え方と、公的な調査にみる水準
  • 弁護士費用の仕組みと「費用倒れ」の考え方
  1. 結論ファースト この記事で一番伝えたいこと
    1. ① 解雇は、会社が思っているほど簡単には認められません
    2. ② 退職届・合意書には、その場でサインしないでください
    3. ③ 証拠を残してください
    4. ④ できるだけ早く、弁護士に相談してください
  2. そもそも「不当解雇」とは? 解雇には3つの種類があります
    1. ① 普通解雇
    2. ② 懲戒解雇
    3. ③ 整理解雇(いわゆるリストラ)
    4. 解雇のルール:労働契約法16条
  3. 「解雇」と「退職勧奨」はまったくの別物です ここを間違えると危険
    1. 解雇とは
    2. 退職勧奨とは
    3. なぜ会社は退職勧奨をするのか
    4. 見分け方のポイント
  4. 解雇・退職勧奨に直面したら、まずやるべきこと【チェックリスト】
    1. □ ① 解雇理由証明書を請求する(解雇と言われた場合)
    2. □ ② やり取りを証拠として残す
    3. □ ③ 退職届・合意書にはサインしない
    4. □ ④ 離職票の「離職理由」を確認する(退職が避けられない場合)
    5. □ ⑤ 出社の扱いに注意する
  5. やってはいけないNG行動5つ 善意や勢いが裏目に出ます
    1. × ① その場で退職届を書く・サインする
    2. × ② 感情的になって「辞めてやる!」と言ってしまう
    3. × ③ SNSで会社を批判する
    4. × ④ 会社の資料やデータを無断で持ち出す
    5. × ⑤ 何もせず時間だけが過ぎる
  6. 解決までの流れ|交渉・労働審判・訴訟の3ステップ
    1. ステップ1:交渉(内容証明の送付〜話し合い)
    2. ステップ2:労働審判
    3. ステップ3:訴訟
  7. 解決金はどのくらいもらえるのか?
    1. 解決金の考え方
    2. 公的な調査にみる解決金の水準(目安)
    3. 「泣き寝入り」との差
  8. 弁護士に依頼する4つのメリット 「自分で交渉」との違い
    1. ① 話し合いが「法的な土俵」に乗る
    2. ② 法的に正しい主張を組み立てられる
    3. ③ 精神的な負担から解放される
    4. ④ 労働審判・訴訟まで見据えた戦略が立つ
  9. 弁護士費用について 不安を残さないために
    1. 労働事件の弁護士費用の一般的な仕組み
    2. 「費用倒れ」にならないかは、最初に正直にお伝えします
  10. よくあるご質問(FAQ)
    1. 試用期間中に解雇されました。試用期間なら仕方ないのでしょうか?
    2. 口頭で「クビだ」と言われただけです。書面がなくても解雇なのでしょうか?
    3. 退職勧奨を断り続けたら、嫌がらせを受けないか心配です。
    4. まだ会社に在籍しています。在職中に相談してもいいのでしょうか?
    5. 解雇されてから時間が経っています。今からでも争えますか?
    6. アルバイト・契約社員・派遣でも、解雇から守られますか?
    7. 相談だけして、依頼しなくても大丈夫ですか?
  11. まとめ 一人で抱え込む前に、LINEでご相談ください

結論ファースト この記事で一番伝えたいこと

お忙しい方のために、まず結論からお伝えします。ポイントは次の4つです。

① 解雇は、会社が思っているほど簡単には認められません

法律上、解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です(労働契約法16条)。かみ砕いて言えば、「やむを得ない」と言えるだけの事情がなければ、解雇は無効になります。「上司と合わなかった」「成績が振るわなかった」程度の理由では、解雇が認められないケースが多いのが実情です。

② 退職届・合意書には、その場でサインしないでください

会社から「退職届」「退職合意書」へのサインを求められても、その場で書かない・署名しないが鉄則です。一度「自分の意思で辞めた」形になると、後から争うことが格段に難しくなります。「持ち帰って検討します」と伝えれば十分です。

③ 証拠を残してください

解雇や退職勧奨の場面では、証拠がその後の交渉を左右します。解雇を告げられたメールや書面の保存、面談のやり取りのメモ(可能なら録音)、そして会社への「解雇理由証明書」の請求です。会社は、請求されれば遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法22条)。

④ できるだけ早く、弁護士に相談してください

「まだ大ごとにしたくない」という段階でも大丈夫です。むしろ、退職届を出す前・合意書にサインする前の相談が最も効果的です。私(弁護士 小野寺範繁)はLINEでのご相談を受け付けていますので、「これって解雇なの? 退職勧奨なの?」というモヤモヤの段階から、お気軽にご相談ください。

この後の本文では、それぞれのポイントを詳しく解説していきます。ご自身の状況に近いところから読んでいただいても構いません。

そもそも「不当解雇」とは? 解雇には3つの種類があります

「不当解雇」という言葉はニュースなどでもよく耳にしますが、法律上の正式な用語ではありません。法律のルールに違反した、無効な解雇のことを、一般に「不当解雇」と呼んでいます。

では、どんな解雇が「無効」になるのでしょうか。その前提として、解雇には大きく3つの種類があることを知っておいてください。

① 普通解雇

「能力不足」「勤務態度が悪い」「病気で働けない」など、労働者側の事情を理由とする解雇です。実務で最も多いパターンですが、後で説明するとおり、簡単には認められません。

② 懲戒解雇

横領や重大なハラスメントなど、会社の秩序を大きく乱したことに対する「処罰」としての解雇です。労働者にとって最も重いペナルティであるため、認められるハードルは普通解雇よりさらに高く、就業規則上の根拠や手続きの適正さも厳しく問われます。

③ 整理解雇(いわゆるリストラ)

会社の経営悪化を理由とする解雇です。労働者に落ち度がないのに職を失わせるものですから、裁判所は「人員削減の必要性」「解雇回避の努力」「人選の合理性」「手続きの妥当性」という4つの観点(整理解雇の4要素)から厳しくチェックします。「経営が苦しいから」の一言で認められるものではありません。

解雇のルール:労働契約法16条

3種類いずれの解雇にも共通する大原則が、労働契約法16条です。条文をそのまま引用すると少し硬いので、かみ砕いてお伝えすると──

解雇は、「客観的に合理的な理由」があり、かつ「社会通念上相当」と言えなければ、無効になる。

つまり、①誰が見ても納得できる理由があり、②「そこまでしなくても…」と思われない程度にバランスが取れていて、はじめて解雇は有効になります。この2つのハードルは、みなさんが想像するより高いものです。

相談者
相談者

私の場合、「任せられる仕事がない」と言われただけなんですが…これは合理的な理由になるんでしょうか?

弁護士
弁護士

その言い方だけでは、まず合理的な理由とは言えないでしょうね。会社が本気で能力不足を理由にするなら、「具体的に何ができなかったのか」「改善の機会を与えたのか」「配置転換は検討したのか」まで問われます。実際には、そこまでの準備がないまま解雇を告げているケースも少なくありません。

もちろん、すべての解雇が無効になるわけではありません。重大な規律違反がある場合や、会社が具体的な指導と改善の機会を十分に与えたうえで行った解雇などは、有効と判断されることもあります。だからこそ、早い段階で見通しを確認することが大切です。

「解雇」と「退職勧奨」はまったくの別物です ここを間違えると危険

実は、労働問題のご相談で最初に確認しなければならない最重要ポイントがここです。あなたが今直面しているのは、「解雇」でしょうか? それとも「退職勧奨」でしょうか?

解雇とは

会社が一方的に「辞めさせる」と通告することです。あなたの同意は関係ありません。その代わり、前のセクションで説明したとおり、法律の厳しいチェックを受けます。

退職勧奨とは

会社が「辞めてくれませんか?」とお願い(説得)してくることです。あくまでお願いですから、断る自由があなたにあります。そして、あなたが応じない限り、退職の効果は一切発生しません。

なぜ会社は退職勧奨をするのか

理由はシンプルで、解雇はハードルが高く、後から裁判で争われるリスクがあるからです。労働者が「自分の意思で」退職届を出してくれれば、会社は解雇のリスクを負わずに済みます。だからこそ、面談で繰り返し退職を促したり、「解雇になったら経歴に傷がつくよ」「今なら退職金を上乗せする」といった言葉で、自発的な退職に誘導しようとするのです。

見分け方のポイント

会社の言葉正体
「あなたを解雇します」「〇月〇日付で解雇」解雇
「辞めてもらえないか」「退職届を出してほしい」退職勧奨
「明日から来なくていい」どちらか曖昧 → 解雇理由証明書を請求して明確にさせる

厄介なのは、3つ目のような曖昧なケースです。「来なくていい」と言われて出社をやめたら、後から会社に「解雇していない。無断欠勤だ」と主張される──そんな事例が実際にあります。曖昧なときこそ、次のセクションで説明する「証拠の確保」が効いてきます。

退職勧奨に応じる場合でも、解決金や退職日、離職理由などの条件は交渉できます。サインする前に確認すべき点は〔退職勧奨への対応(近日公開)〕で詳しく解説します。

弁護士
弁護士

「解雇なら不当解雇として争う」「退職勧奨なら断るか、条件交渉をする」──入口が違えば、戦い方もまったく違います。ご自身がどちらの状況なのか分からないときは、その確認だけでもご相談いただく価値がありますよ。

解雇・退職勧奨に直面したら、まずやるべきこと【チェックリスト】

ここからは実践編です。今まさに直面している方は、上から順に確認してください。

□ ① 解雇理由証明書を請求する(解雇と言われた場合)

会社に「解雇の理由を書面で出してください」と請求しましょう。労働基準法により、会社には交付義務があります。この書面によって、会社が何を解雇の理由としているのかを早い段階で明らかにできます。後になって会社が別の理由を持ち出してきた場合にも、「当初は挙げていなかった理由だ」と指摘する有力な材料になります。即日解雇で予告期間がない場合も、退職時の証明として解雇の理由を書面で求めることができます。メールで請求すれば、請求した事実自体も証拠に残ります。

□ ② やり取りを証拠として残す

  • 解雇や退職勧奨について自分宛てに届いたメール・書面・チャットは、スクリーンショットや写真など、手元に残る形で必ず保存を。ただし、顧客情報や社外秘の資料が含まれるものを私用アドレスに転送するのは避けてください(→NG行動④)
  • 面談は可能であれば録音を。スマートフォンのボイスメモで十分です。自分が参加している会話の録音は、無断でも証拠として使えるのが一般的な取り扱いです。なお、自分がその場にいない会話を録音する(録音機を置いておくなど)のは避けてください
  • 録音できなかった場合も、直後に日時・場所・発言内容をメモしておく

□ ③ 退職届・合意書にはサインしない

繰り返しになりますが、最重要です。その場の空気に押されそうになったら、「持ち帰って検討します」「家族と相談します」。この一言だけ覚えておいてください。会社に即答する義務はありません。

□ ④ 離職票の「離職理由」を確認する(退職が避けられない場合)

離職票の離職理由が「自己都合」か「会社都合」かで、雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)の給付開始時期や給付日数が大きく変わります。解雇(本人の重大な落ち度による解雇を除きます)や、退職勧奨に応じた退職は、原則として「会社都合」(特定受給資格者)として扱われます。「自己都合」とされていたら、ハローワークで異議を述べることができます。

□ ⑤ 出社の扱いに注意する

「来なくていい」と言われても、自分の判断で完全に音信不通にならないこと。働く意思があることを書面やメールで伝えておくと、後から「無断欠勤」「自分から辞めた」と主張される事態を防げます。

やってはいけないNG行動5つ 善意や勢いが裏目に出ます

証拠の確保と同じくらい大切なのが、「やらないこと」です。感情が高ぶる場面だからこそ、次の5つは踏みとどまってください。

× ① その場で退職届を書く・サインする

最大のNGです。一度「合意退職」(会社と労働者が合意して労働契約を終わらせること)の形が整うと、これを覆すのは不当解雇を争うより格段に難しくなります。「錯誤だった」「強要された」という主張は、よほどの事情がないと通りません。

× ② 感情的になって「辞めてやる!」と言ってしまう

お気持ちは痛いほど分かります。しかし、売り言葉に買い言葉の「辞めます」発言も、退職の意思表示と扱われるリスクがあります。言いたいことは、弁護士を通じて法的に意味のある形でぶつけましょう。

× ③ SNSで会社を批判する

在職中の投稿は、それ自体が懲戒事由(会社が処分の理由にできる事情)とされ、会社に解雇の「後付けの理由」を与えてしまうことがあります。投稿は解決後もインターネット上に残り、転職活動に影響するおそれもあります。

× ④ 会社の資料やデータを無断で持ち出す

「証拠になるかも」と会社の資料を無断で大量に持ち出すのは危険です。それ自体が就業規則違反や刑事上の問題を指摘され、立場を悪くします。証拠の収集方法に迷ったら、持ち出す前にご相談ください。

× ⑤ 何もせず時間だけが過ぎる

「そのうち何とかなるかも」と放置するのが、実は一番もったいないパターンです。残業代などの未払賃金を請求できる権利は、現在は3年で時効にかかります(2020年4月以降に支払日が来るもの)。解雇や退職勧奨の場面では、未払いの残業代が見つかることも少なくないため、あわせて確認しておきましょう。また、時間が経つほど証拠は散逸し、記憶も薄れます。解雇を争う場合も、長期間何も言わずにいると「解雇を受け入れていた」と評価されるリスクが高まります。

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解決までの流れ|交渉・労働審判・訴訟の3ステップ

「弁護士に相談したら、いきなり裁判になるのでは…」と心配される方が多いのですが、実際は違います。解雇事件の場合、裁判までいかずに解決するケースが多いです。全体の流れを知っておくと、不安はかなり軽くなるはずです。

ステップ1:交渉(内容証明の送付〜話し合い)

弁護士があなたの代理人として、会社に内容証明郵便(いつ、どんな内容の文書を送ったかを郵便局が証明してくれる郵便)で通知を送り、話し合いを始めます。通知を受けた会社側も、弁護士や社会保険労務士に相談して対応を検討するのが通常です。会社側にも代理人弁護士がつくと、法的な見通しを前提にした話し合いになり、紛争の長期化を避けたいという考えから、この段階で金銭解決(解決金の支払い)や退職条件の上乗せがまとまるケースがあります。期間の目安は2〜6か月程度です。

ステップ2:労働審判

交渉がまとまらない場合の、有力な選択肢です。労働審判は「原則3回以内の期日」「申立てから平均約3か月」で結論が出る、労働事件のために作られた簡易迅速に解決を図る手続きです。裁判官1名と労働問題の専門家2名が間に入り、多くの事件は途中の調停(話し合い)で解決します。「裁判は何年もかかる」というイメージとはまったく別物と考えてください。

ステップ3:訴訟

労働審判の結果に納得できない場合や、事案が複雑な場合は、通常の訴訟に移行します。期間は1年前後かかることが多くなりますが、その分、証拠をじっくり吟味した判断が得られます。解雇が無効と判断されれば、解雇された日から解決(復職など)までの間の賃金(「バックペイ」といいます)の支払いが認められます。争う期間が長くなるほど金額も大きくなるため、経済的なメリットが大きくなることもあります。ただし、その間にほかの仕事で得た収入は一定の範囲で差し引かれることがあり、また、働く意思を失ったと評価されると、その後の分は認められにくくなります。

相談者
相談者

3回以内で終わる手続きがあるんですね。裁判で何年も争う覚悟がないと相談しちゃいけないと思っていました…。

弁護士
弁護士

そう思って一歩を踏み出せない方もいらっしゃいます。実際には、交渉や労働審判で半年から1年程度のうちに解決するケースが多いです。「どのステップまで進めるか」もご希望に合わせて設計できますから、まずは現状を教えてください。

※どの手続きを選ぶべきか、費用がどのくらいかかるかは、この後の「弁護士に依頼する4つのメリット」「弁護士費用について」で詳しく説明します。

解決金はどのくらいもらえるのか?

不当解雇や退職勧奨の事件は、最終的に「解決金」の支払いを受けて退職するという金銭解決で終わることが多くあります。「復職ではなくお金なの?」と意外に思われるかもしれませんが、解雇を争った会社側としてはもう戻ってきてほしくないという意向が強く、労働者の側も、信頼関係の壊れた職場への復帰を望まないことが多いため、実際には金銭解決となることが多いです。

解決金の考え方

解決金に決まった相場はありませんが、主に次の事情で変わります。

  • 解雇が無効と判断される見込みの強さ(解雇理由と証拠)
  • 月額賃金と、解決までにかかった期間(バックペイの額)
  • 勤続年数、年齢、再就職の状況
  • 会社に戻ることを望むかどうか

公的な調査にみる解決金の水準(目安)

手続解決金の中央値月収の何か月分か(中央値)
労働審判150万円4.7か月分
裁判上の和解300万円7.3か月分

出典:労働政策研究・研修機構(JILPT)「労働審判及び裁判上の和解における雇用終了事案の比較分析」(労働政策研究報告書No.226、2023年)。1つの地方裁判所で2020年・2021年に終わった、地位確認を求める事案(労働審判785件、和解282件)の調査。「月収の何か月分か」は、解決金額を賃金月額で割った値(月収表示)の中央値です。

※裁判所の手続を利用した事案の、統計上の中央値です。事案によっては、これを大きく下回ることも、解決金が得られないこともあります。

「泣き寝入り」との差

一方で、会社と条件の話をしないまま退職届を出してしまうと、解決金や退職条件の上乗せを求める余地はほとんど残りません。行動するかどうかで結果に差が生まれやすい分野であることは、知っておいてください。

弁護士
弁護士

「自分のケースでいくらぐらいが見込めるのか」は、解雇理由・証拠・賃金額をうかがえば、ある程度の見通しをお伝えできます。相談の段階で遠慮なく聞いてください。

弁護士に依頼する4つのメリット 「自分で交渉」との違い

「弁護士に頼まなくても、自分で会社と話せばいいのでは?」──そう考える方もいらっしゃいます。もちろんご自身で交渉すること自体は可能です。ただ、実務上は次のような違いが出やすいのが実情です。

① 話し合いが「法的な土俵」に乗る

在職中の(あるいは解雇されたばかりの)労働者本人からの申入れには、十分に取り合わない会社もあります。弁護士名で通知が届くと、会社としても法的な対応を検討せざるを得なくなり、話し合いが進みやすくなることがあります。もっとも、弁護士が就いたからといって、会社の態度が必ず変わるわけではありません。

② 法的に正しい主張を組み立てられる

同じ事実でも、「ひどいじゃないですか」と伝えるのと、「本件解雇は労働契約法16条の要件を欠き無効である」と主張するのとでは、会社に与えるプレッシャーがまったく違います。判例の蓄積を踏まえて主張を組み立てるのは、専門家の仕事です。

③ 精神的な負担から解放される

解雇・退職勧奨の局面で一番つらいのは、会社と直接やり取りし続けることそのものです。依頼後は、会社との窓口はすべて弁護士になります。会社と直接やり取りしなくてよくなることは、精神的な負担を軽くするうえで大きな意味があります。

④ 労働審判・訴訟まで見据えた戦略が立つ

「交渉が決裂したら労働審判に移る」という選択肢を現実に持っていることは、交渉自体を有利にします。会社側も「この件は本気だ」と受け止めるからです。

弁護士費用について 不安を残さないために

弁護士への相談をためらう理由としてよく伺うのが、「費用がいくらかかるか分からない」という不安です。だからこそ私は、ご依頼前に費用の総額イメージを必ずご説明し、ご納得いただいてから進めることをお約束しています。

労働事件の弁護士費用の一般的な仕組み

  • 法律相談料──ご相談の際の費用です(初回相談については下記をご覧ください)
  • 着手金──ご依頼時にお支払いいただく費用。結果にかかわらず発生します
  • 報酬金──解決時に、得られた成果(解決金など)に応じてお支払いいただく費用
  • 実費──内容証明の郵送料、労働審判の申立費用など
  • 日当──裁判所の期日への出頭など、事務所外での活動に応じて生じる場合がある費用

「費用倒れ」にならないかは、最初に正直にお伝えします

弁護士費用が見込まれる解決金を上回ってしまうようでは、依頼する意味がありません。私は、初回のご相談時に「この事案は依頼するメリットがあるか」を率直にお伝えします。場合によっては「まずはご自身で解雇理由証明書を請求してみてください」「労働局のあっせん制度を使う方法もあります」といったご案内をすることもあります。それが「頼れる身近な法律家」でありたい私の方針です。

※具体的な費用体系(初回相談料・着手金・報酬金の料率)は、費用ページをご覧ください。

相談者
相談者

「依頼しない方がいい場合もある」って正直に言ってもらえるのは、安心できますね。

弁護士
弁護士

費用の話を曖昧にしたまま進めることは絶対にしません。お金の不安を抱えたままでは、肝心の事件に集中できませんからね。

よくあるご質問(FAQ)

試用期間中に解雇されました。試用期間なら仕方ないのでしょうか?

いいえ。試用期間中や試用期間満了時の解雇(本採用拒否)にも、通常の解雇に準じた合理的な理由が必要です。「試用期間だから自由に解雇できる」というのは誤解です。通常の解雇よりは広く認められる傾向があるものの、「なんとなく合わない」程度では認められないケースが多くあります。

口頭で「クビだ」と言われただけです。書面がなくても解雇なのでしょうか?

解雇の意思表示は口頭でも法的には成立し得ます。ただし「言った・言わない」の争いになりやすいため、すぐに解雇理由証明書を請求して、解雇の有無と理由を書面で明らかにさせることが重要です。

退職勧奨を断り続けたら、嫌がらせを受けないか心配です。

退職勧奨を断ったことへの報復として、嫌がらせ・降格・遠方への配転などを行えば、それ自体が違法と評価され得ます。長時間・多数回にわたる執拗な退職勧奨も違法になり得ます。面談の録音・メモを残しながら、早めにご相談ください。

まだ会社に在籍しています。在職中に相談してもいいのでしょうか?

もちろんです。むしろ在職中・退職届を出す前のご相談が最も選択肢が多いタイミングです。弁護士には法律上の守秘義務があり、ご相談の内容やご相談いただいた事実を、ご本人の同意なく会社に伝えることはありません。念のため、会社のパソコンやスマートフォン、社内のネットワークからのご連絡は避けていただくと安心です。

※ご相談の相手方との関係(利益相反)によっては、ご相談をお受けできない場合があります。

解雇されてから時間が経っています。今からでも争えますか?

解雇から時間が経っていても争える場合はあります。ただし、時間の経過とともに不利になる要素が増えるのも事実です(証拠の散逸、「解雇を受け入れていた」との評価など)。「もう遅いかも」と思っても、まずは一度ご相談ください。

アルバイト・契約社員・派遣でも、解雇から守られますか?

はい、雇用形態にかかわらず一定の保護があります。ただし、適用されるルールは少しずつ異なります。

  • 期間の定めのない契約(正社員のほか、無期雇用のパート・アルバイトを含みます):合理的な理由と相当性がなければ解雇は無効です(労働契約法16条)
  • 契約期間の途中での解雇(契約社員など):「やむを得ない事由」が必要で、正社員の解雇よりむしろ厳しく判断されます(同法17条1項)
  • 契約期間満了での更新拒否(雇止め):何度も更新されてきた、更新を期待させる言動があったといった場合には、解雇と同様のチェックが及びます(同法19条)
  • 派遣社員:雇い主は派遣元(派遣会社)です。派遣先との契約が途中で打ち切られても、それだけで派遣元との雇用契約が当然に終わるわけではありません

一方で、会社が人員削減を行う場面では、正社員より先に有期契約の方が対象とされても、不合理とはいえないと判断されやすい傾向があります。雇用形態だけを理由にあきらめる必要はありませんが、見通しは契約の内容や更新の経緯によって変わります。

相談だけして、依頼しなくても大丈夫ですか?

まったく問題ありません。「話を聞いて、状況を整理できただけで気持ちが楽になった」という方も多くいらっしゃいます。ご相談の結果、ご自身で対応できそうならその方法をお伝えしますし、依頼すべき事案であればその理由をご説明します。判断はそれからで大丈夫です。

まとめ 一人で抱え込む前に、LINEでご相談ください

最後に、この記事のポイントをもう一度まとめます。

  • 解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要。会社が思うほど簡単には認められない
  • 「解雇」なのか「退職勧奨」なのかで対応は180度変わる。曖昧なら解雇理由証明書の請求で明確にさせる
  • 退職届・合意書にはその場でサインしない。「持ち帰って検討します」の一言を
  • 証拠(メール・録音・メモ)は早いほど有利
  • 解決までの道筋は交渉→労働審判→訴訟。数か月で金銭解決するケースもあり、「裁判で何年も」とは限らない

突然の解雇や執拗な退職勧奨は、生活の不安と精神的なショックが同時に襲ってくる、本当に苦しい出来事です。しかし、法律は、立場が弱くなりがちな働く人を守るためのルールをしっかり用意しています。そして、早く動いた人ほど、選べる道が多く残っています。

私は、LINEでのご相談を受け付けています。「これって不当解雇?」「退職届を出せと言われて困っている」──その一言だけでも構いません。川口・浦和・大宮をはじめ埼玉で働く皆さまの「頼れる身近な法律家」として、状況の整理からお手伝いします。

ご相談の流れや受付方法は、労働問題のご相談についてでご案内しています。

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あわせて読みたい(近日公開)
  • 解雇理由証明書の請求方法
  • 退職勧奨を受けたときの対応
  • 残業代請求の方法と時効

小野寺 範繁(埼玉弁護士会所属)